スクランブル





「俺、今から告白してくるんだ」

部誌を書きながら、突然、南が言った。

「はっ?」
「これ終わったら、いってくるんだ」

そう言えば、今日の南は、なんだかそわそわぼけーっとしていたなあと思い返す。

「へ、へぇ〜??そうなんだ、誰だれ?俺が知ってる人?」
「笹原先輩。」
「・・・ぇ、え!?」

笹原先輩は、俺たちの2個上の先輩で、もと女テニ。クールビューティーって感じで、もちろん、とっくに卒業済みだ。

「笹原先輩?!南が?」
「〜〜〜〜うん・・・・」

ぜんぜん知らなかった。
話によると、ずぅっと好きだったらしい。先輩が卒業して、忘れられるかな、と思って2年経って、その間彼女いたこともあるのに、でも忘れられなかったらしい。そして意を決しての告白。ふられるの覚悟で、それでも言って、けじめ付けたいらしい。
その勇気と行動力に、本気で感動する。南を尊敬する。

「てか、・・・・・・・・・・うわ〜〜〜〜どうしよ、マジ緊張してきた。」

さっきから、南は部誌のおんなじ場所を書いては消している。

「部誌、俺、書こうか」
「や、いや」

あ、本当に南、パニくってる。南は、こういうこと自分で解決するほうだし、まして、俺に言うなんて。ほら、俺こんなやつだし。
“恋”ね。こんな風に、どきどきずきずきぎしぎしになってさ、もう南ったら!





「・・・恋ってなんだろね・・・」
「え?」
「俺、小6の時はテニススクールで一緒だった佳代ちゃんが好きだったんだよなあ」

誰にも言ったことのない、初恋の話をさらりと言ってみる。どきどきするってのはこれしか覚えがないのだ。

「子供だったからさあ、今みたく、アピールっての?ぜんぜん、出来なかったんだけどさあ」
「それ、マジだった?」




心臓の裏が冷えた気がした。




「・・・え、うん?」

本気だった、はず。“あれは恋だった”



南、どうしてそんなこと言うの


「何?っていうか、南、顔色悪い」
「・・・うぅ、千石、俺、まじ女々しいよなあ・・・」
「はい、胃薬」



確かにそれは俺のコンプレックスで、俺は、恋愛感情ってどういうものなのか、はっきり言ってよくわかんない。愛は、あるとは思う。俺は、女の子すきだし、家族もすきだし、みんなを愛していると思うし。どうしてそれだけじゃだめなんだろう。俺は、南が好きだよ。
 恋愛って何だろう。



***
緊張した面持ちの南を笑顔で駅まで見送って、俺はいつものバスに乗る。
結局、俺は南のことこれぽっちも考えてなかったな、自分のことばかりだ、と気づいてちょっと苦笑する。答えなんて出ないことばかり、ぐるぐる、思考は回る。

本当に本気だったんだろうか、俺はあの子を好きだったと言えるのかどうか、
ぐるぐる、ぐるぐる。
俺はいつか、本当に人を好きになることが出来るのか自分で自分が不安になる。俺は俺でいいなんて、そんなの、嘘つき過ぎる。

泣きそうだ、

そう思ったけれど、泪はこぼれず、浮きもせず、俺は自分が心底無表情なことに気づいて、バスの窓に映った自分に笑いかけた。







05.05.26