がちゃっ ずかずか ヒバリがディーノの私室に無遠慮に入ってくる。 「お、お?どうした?いきなり」 ベッドで読書をしていたディーノに、黒のタイを緩めながらヒバリが一言。 「せんせえ、ヤラせて。」 「は?」 ヒバリが乱暴にディーノをベッドに沈める。そのとき、ふわりと血のにおいがした。 キャッバローネのアジト、もう遅い時間、今はボスであるディーノが私室に、数名の部下が階下にいるだけだ。ヒバリは同盟ファミリーの人間だし、過去ディーノの生徒であったから、ほとんど無条件に通されたのだろう。部下たちはボスの教え子であるヒバリを結構かわいがっている。 「・・・ぉおーい、恭弥?嫌な仕事でもあったのか?」 喉の薄い皮膚に吸い付かれながらディーノが言う。 「・・・逆だよ。久々に楽しくってさ、おさまんないの」 ぎらぎらした獣の目でヒバリは笑って、興奮した熱の証をディーノの足に押し付ける。ぎくり、と少しの緊張が走った。 「・・・っ、とりあえずっ血ぃくせーからシャワーくらい浴びろ!」 「血のにおいのするセックスも刺激的でしょう?」 「悪趣味・・・っ」 ***** 結局、シャワーを浴びさせてから情事に及んだ。けれど、久しぶりの女役のディーノをヒバリが激しく抱くから、なんだかんだ言って血のにおいのするセックスだ。 痛みにうめくディーノに、あなたは色気がないね、とヒバリは欲情した声で笑う。気遣いや遠慮なんて対等な今の二人には皆無だ。 結合部から、ぐちぐち、と血が泡立つ音がする。 「・・・っは、・・・恭、弥・・・っ」 「ねぇ、後ろ使うのいつぶり?」 「・・・こないだ、お前として以来だよ・・・っぁ、はぁっ、お前は、早く・・・っ、女、作れ・・・!」 「・・・考えておくよ」 ヒバリがディーノを抱きにくる、抱かれにくる、そのたびに「女作れ」「考えておく」の応酬。実際、ディーノにもヒバリにも抱く女ぐらいはいるのだ。けれど、ヒバリはディーノを求め、ディーノはそれを拒否しない。ディーノにとってヒバリはかけがえなくかわいい教え子だし、ヒバリにとってディーノは最大限のわがままを、甘えを許してくれる存在なのだ。 がり、とヒバリがディーノの首筋に歯を立てた。傷口に唾液を塗りこめながら、にじむ血をタトゥに沿ってなぞらせる。 「・・・っ、ぅあ、噛むなって・・・!」 「あなた、今、すっごくエロい顔してるよ」 「おまえ・・・っ、さい、あ、く・・・っ」 ヒバリはディーノすらいたずらに傷つける。歯を立て爪を立てる。まさに獣の子供だ。生傷を作られ、翻弄されるたびに躾け方を間違えたなあ、とディーノは思うのだった。 ***** シャワーの音でヒバリは目を覚ました。 「・・・せんせえ?」 「のぞき禁止。今、処理中。・・・ったく、中出ししやがって」 「・・・scusa」 「・・・・・・今日何があった?ターゲットに恨み言でも言われたか」 「・・・・・・・・・」 「っま、いーけど!殺したやつの目は見るなよ、ムカつくだけだ。・・・よっと!」 どっ がしゃっ どしん! ディーノの掛け声のあと、すごい音がシャワールームから響く。 「せんせい!?」 ヒバリが慌ててのぞくと、ディーノがあられもない格好で倒れている。 「いててて・・・すっころんじまった」 「・・・・はぁ〜、相変わらずだね」 「手、貸してくれよ」 無言で差し出された手をとってディーノは立ち上がった。二人並び、ディーノは、まだ背は抜かされてないな(人種が違うし)、と思いながら、くしゃりときれいな黒髪をなぜる。そして一瞬、触れるだけのキス。 「おまえもシャワー浴びな。俺ぁ、先に寝るぜ」 そうして、ディーノはベッドに向かう。ヒバリが戻ってきたときはもうすでに夢の中だ。 ***** 次の朝、朝食にコーヒーだけ共にして、ヒバリは帰る。 帰り際、またヒバリが抱きに、抱かれに来ることを確信しながらもディーノは言う。 「もう、これっきりなしだぜ恭弥」 ヒバリはそれに答えず、一瞥くれただけで行ってしまった。 ディーノは、かわいくねー生徒だと思いながら、痛む腰に自分の年を感じるのだった。 |